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ビジネスパーソンの永遠のテーマ「生産性」。
そんな「生産性」は国も経営者たちも昔からとても大好きです。
しかし介護分野では「生産性」を見聞きすることがあまりありません。
まったく聞いたこともない。という人もいるのではないでしょうか。
それはなぜでしょう?
介護に関係ないからでしょうか?
今回のテーマは「介護の生産性」についてです。
実はこのお話「伝え方を間違えると火傷してしまう」ため、介護(福祉)分野の経営者たちは積極的に伝えたくありません。
全ての会社で同じような状況ではないと思いますが、どちらかと言えばタブーな類のお話ではないでしょうか。
その原因は、2つの概念が対立的な立場になっているからだと思います。
「国・経営者の視点」 = 企業が目指す生産性の概念
「介護士・ご利用者の視点」 = 個人の目標にそった生産性の概念
まずは、一般的に企業が目指す生産性の概念をおさらいしていきましょう。
生産性とは何か?
生産性とは
モノ・サービスをつくるために投入したお金がどれだけ効果的に使われたかを測る数字です。
(生産性の公式。コストと利益のバランスのイメージ図)
なんとなくイメージが沸いてきたのではないでしょうか。
それでは、仕事における生産性の意味とはなんでしょうか。
仕事における生産性の意味は
労働時間に対して成果がどれだけ得られたのかという意味で使われています。
日本の生産性は先進国内で最下位であったり、働き方改革がはじまったりしたことで、業務の効率化や長時間労働への問題意識はどんどん高まっています。
いかにして生産性を向上させるかという課題は企業にとって急務なのです。
このように注目されている生産性を上げるには
・仕事を効率化し
・必要な仕事とやらなくていい仕事の取捨選択
を行わなくてはなりません。
成果につながらない仕事を「決まりだから」と何となく続けるのではなく、本当に必要な仕事とそうでない仕事に仕分けをして、本当に必要な業務に集中して取り組めるようにすることが重要です。
同じ労働時間でも、より多くの利益をあげることができるようになれば、残業にかかる人件費の削減も期待できます。
生産性とは「投資した人・物・金に対してどれだけの成果が出せたのか」という指標なので、少ない投資でより多く成果をあげれば生産性は高くなります。
一方で効率化とは、時間や費用に関わるコストを下げ、投資の量を下げることです。
つまり、効率化とは、生産性を高めるための手段のひとつなのです。
介護の生産性とは何か?
それでは、介護分野の生産性を考えてみます。
ご存じのとおり、社会保険の1つである介護保険。
私たちはこの介護保険のルールに沿って事業を展開しています。
そして介護保険には明確な目的があります。
第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
要約すると、介護保険の目的は3つに大別することができます。
1つ
介護を必要とする人が「尊厳を保持し」
2つ
その人が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようになること」
3つ
社会全体で「国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ること」
このように、介護保険法による介護の目的は、介護が必要となった人の生活のためであるということと、介護の必要性が急増してきた社会全体のためであると考えられます。
そして、たった6文字で表現されている「尊厳を保持し」という言葉。
ここに介護の生産性の意味を解くヒントがあります。
介護をされるというと「お世話を受ける」「誰か(何か)に依存しなければならない」というようなイメージを抱かれるかもしれませんが、目的はあくまで自立支援であり、その過程では本人の尊厳を守ることが重要となってきます。
ただし、私たちが提供している介護サービスや使った時間は売上げを出すための費用です。費用がかかり過ぎているのなら、その部分は是正していった方がよいでしょう。双方の利害が一致する共通点を探してみましょう^^
関わりの時間をねん出するためにその他の業務の改善をするってことでしょうか?
介護で生産性向上が必要となる背景
介護で生産性、生産性と言われるようになったのには訳があります。
それは日本をとりまく生産年齢人口の急速な減少です。
日本の人口は減り続けており、特に生産年齢人口は急速な減少が続いています。
生産年齢人口とは、生産活動の中心にいる人口層のことで、15歳以上65歳未満の人口がこれに該当します。
日本国内の生産年齢人口は1995年がピークで、それ以降は減少傾向が続いており増加の見込みもないのが現状です。
そして、2040年にかけてその傾向がさらに大きくなることが予想されています。
日本は高齢化社会のピークを迎え、介護ニーズの急増と多様化が介護現場を直撃することが予想されています。
高齢者を現役世代が支える仕組みになっている日本の社会保障形態では、生産年齢人口の減少は死活問題です。
これから「介護人材の確保」がさらにひっ迫の一途をたどる事になります。
そのため、どのように介護サービスの質を確保しつつ、向上させていくにはどうしたらよいかを考える必要があるのです。
また、厚生労働省は近い将来、介護現場が直面する課題の対策として
主に下記の4つについて様々な方向から対策をすることで、生産性を向上させ、急増・多様化する介護ニーズに対応していく必要があるとしています。
①介護職員の処遇改善
②多様な人材の確保・育成
③離職防止・定着促進
④介護職の魅力向上
たとえば、生産人口増加は自国内だけでは改善できません。この問題を解決するために外国人の積極的な受け入れが介護分野でも加速しています。
擁護するわけではないですが、国も頑張っています。国が作った仕組みをどのように活用するのかは、私たちが所属する会社の努力次第になります。
介護分野は常に変化している
生産年齢人口がピークだった1990年代の介護は、家事支援が主な内容だったと言われています。
しかし、現在の介護はどうでしょうか?
現在の介護は
多様化するニーズに対応しながら、全人的な復権を目標にしています。
まさに、壮大です。
個々のニーズを汲み取り、多種多様な支援に順応するために、介護士が変化を求められています。
それと同時に、介護サービスを受ける側のモラル向上も課題にしないといけません。最近ではサービス利用者やその家族のモラル低下も問題です。こちらは自治体の啓発活動や学校教育で対応してほしいですね。
生産性向上のために取り組むべき3つのこと
生産性を向上するために具体的に取り組むことは、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」をなくしていくことです。
つまり、効率化です。
たとえば「コピーをする」ために事務所へ向かうとします。
目的の資料をコピー機にセットして印刷を開始。
コピーし終わって現場へ戻る過程で10分かかったとします。
たとえば「ご利用者の嗜好品の買い出し」に出かけるとします。
お店に到着して目的の物を探し購入します。
無事に買い物が済んで帰り着く過程で1時間かかったとします。
たとえば「特変なし。を手書きで記録する」とします。
単純に人数分×手書き作業になるため、同じことを何度も何度も繰り返し書きます。
全て書き終える過程で、5分かかったとします。
このようなことが、介護現場では日常茶飯事に発生しています。
コピーに関しては、現場にもコピー機を設置したり、wifiをつなげてリモート操作で印刷できるように工夫したり
買い出し業務に関しては、ネット発注で済みます。特に同じものを繰り返しの購入であればお店側も配達してくれる可能性があります(「外出自体を目的としている」等は別です)
手書き記録に関しては、タブレット機器を導入することで定型文を用いて一瞬で終わります。毎回プリントアウトする必要もなく、紙媒体が必要な時に必要な分のデータを印刷すればいいのです。導入が難しいのであれば、転記を無くしたりする工夫もあります。
そのほか、写真の印刷もデータを送るだけで直ぐに宅配で届くネット外注もあります。
くり返しの業務は基本的にオートメイション化したり、アウトソーシングを活用したり、様々な視点で効率化を図ることができます。
地域によってはボランティアが代行してくれるサービスがあるかもしれません。
1つでもムリ・ムダ・ムラの業務があり、それが常態化していると
スタッフの人数 × 時間 × 回数
これが365日行われているため、生産性はどんどん低下してしまいます。
ムリ(設備や人材の心身への過度な負担)
・キャリアの浅い職員がいきなり1人で夜勤に入る
・体重が重たい人を女性職員1人でトイレ誘導する
ムダ(省力化できる業務)
・利用者を自宅に送った後に、忘れ物に気づき、もう一度自宅に届ける
・バイタル等の記録を何度も転記している
ムラ(人・仕事量の負荷のばらつき)
・手順通りに作業する職員、自己流で作業する職員、状態に応じて作業する職員がいる
・曜日によってスタッフ数にばらつきがあり、対応に差が生じる
・介護記録の研修機会がなく、介護記録の内容が職員によってマチマチで、正確な情報共有ができていない
「どんな小さなことでもいいので、まず取り組んでみること」が重要です。
「改善」と聞くと「改革」のような大きな変化や飛躍をイメージしてしまう方もいるかもしれませんが、改善とは地味なものです。
明日からすべて上手くいく。なんてことはあり得ません。
取組んでみたことを「PDCA」に落とし込んで、小さな改善の繰り返しおこなっていきます。
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生産性向上をするための標準的な6ステップ
ステップ1:改善活動の準備
ここでは、改善活動を行うためのプロジェクトチーム作りをします。
1人で出来ることには限界がありますし、介護はシフト制であるため自分だけが頑張っても改善にはつながりません。
プロジェクトチームを作りポイント
・改善活動に前向きに取り組むことができる職員を集める。
・パソコン操作などに慣れている職員をメンバーに入れておく。
・リーダーは役職。とは決めずに、職員の意欲や人材育成の観点も踏まえて検討します。
・それぞれに役割を決めて、特定の人に負担が集中しないように配慮します。
次に、改善活動の取り組みを事業所全体に宣言します。
宣言時のポイント
・経営層又はそれに順ずる役職者から、活動の目的やプロジェクトチームのメンバー紹介を事業所全体に宣言してもらう。
・職員1人1人が改善活動の意義を理解できるようにする。
ステップ2:課題を見える化する
ここでは、課題を把握します。
課題の把握の方法は、聞き取りしたり、アンケートを配布したりあるかと思います。自事業所で取り組みやすい方法を選択しましょう。
課題把握時のポイント
・「何か課題ありますか?」など抽象的な表現をすると、各々自由に記入するため収集がつきません。具体的な問いかけを意識しましょう。
・電子媒体を活用したほうが、データ集計などの手間が少なくなります。
(エクセルデータに記入し、メールで集めるなど)
課題の集約が終わったら、データを見える化しましょう。
見える化のポイント
・グラフなど、図や絵でわかりやすくする
・数値で表現する
ステップ3:実施計画を立てる
ここからはワークショップ形式で「事業所の課題はなにか」「どのように解決していくか」を話し合っていきます。
ファシリテーターと呼ばれる司会進行役を中心に話し合いを進めていきます。
ワークショップ成功のポイント
・参加者が自発的に発言できる環境を整える
・注意や指導をしたり、他人の意見を否定しない
・人の意見は最後まできく
・リラックスした雰囲気作りをする
・みんなが確認できるように、ホワイトボードなどを準備しておくと、進行しやすい
ファシリテーター成功のポイント
・ワークショップの意義や目的を理解し、それに沿った議論を投げかけていく
・話が逸れてきた場合は、あらためて議題を共有し、軌道修正を図る
・全員が発言できるように配慮する
・議論をまとめ、結論を出す
課題を洗い出したところで、解決する優先順位を決めていきます。
ステップ4:改善活動スタート(PDCAサイクルを回す)
まずは、とにかく取り組み、試行錯誤を繰り返しましょう。
改善活動に取り組むポイント
・大きな成功は、小さな成功の積み重ね
・どんなに些細な成功事例でも、事業所全体に周知して、モチベーション向上につなげる
最後に
書類の電子化が進んだことから、関連す る IT機器のリース需要の高まりも、労働生産性を上昇させる要因となっている。(中略)企業にとって賃金が上昇 傾向にある一方で、それに見合うほど生 産性向上が進んでおらず、新たな付加価 値を生む事業の拡大や事業プロセスの 見直しが求められている状態であるといえよう。
上記コメントは「公益財団法人 日本生産性本部」様の生産性向上に関する研究資料から引用させていただきました。
介護分野でもIT機器などを導入することで生産性が向上が期待できることは明らかです。
しかし、普及していないのはなぜでしょうか。
企業が目指す生産性と、介護が目指す生産性には隔たりがありますが、共通点をみつけて
どんなに小さなことでもいいので、まずは取り組んでみることが大切です。
今回は生産性に関しての記事でした。
誰かの役に立てれば幸いです。
それではまた!