こんにちは、村長のすももです。
介護村アカデミーは、介護士向けにビジネススキルを紹介するサイトです。
実践的でわかりやすく、シンプルをモットーに日々の業務で役立つ情報を発信しています。
ブログ更新のお知らせが届く「Twitter」、何でも相談ができる「LINE」もやっています。
どうぞ気軽にご利用ください。 すもも
みなさんは、ある時上司から
・数字を使って話しなさい
・具体的な数字を出してみなさい
・何を言っているのかわからない
などの指摘をうけてドキッとした経験はないでしょうか。急に言われても普段から意識していないと中々こたえることは難しいと思います。
どのような分野の仕事でも共通して言えることが1つだけあります。
それは、数字の力が必要。だということです。
ビジネスシーンでは時に英語力よりも重要視されることがあるといいます。
そもそも介護に数字が必要なのか、といった疑問がわいてくるかもしれませんが
結論は、間違いなく必須です。
ここはあえて、介護だからこそ数字の力が必要だということを重ねてお伝えしておきます。
今回のテーマは「数字で伝えることの重要性」です。
仕事ができる人ほど数字を意識しています。
自分は文系だから・・・。と逃げ腰にならなくても大丈夫です。
文系人間でもコツさえつかめれば数字で話すことが出来るようになります。
この記事を読み終えたとき、あなたの数字アレルギーが軽減され、少しでも数字を意識できるようになれば、こんなにうれしいことはありません。
この記事で学べること
・なぜ数字で伝える必要があるのか
・数字で伝える重要性
・数字力を使った具体的な伝え方(技術)
現場が振り回される背景には数字不足がある
唐突ですが
「みんなが言っています」
の「みんな」とは「誰」のことでしょうか?また、いったい「何人」でしょうか?
介護の現場で働いていると、このような曖昧な表現に出合う場面が多くあります。
とても数字とは程遠い表現ですよね。
その原因を探るために、もう少し話を聞いてみましょう。
「現場はとても大変なんです。みんなが言っています。」
ここでまた疑問がわいてきました。「とても」とはいったい「どれくらい」でしょうか?
もっと話を聞いてみましょう。
「人手不足で現場はとても大変なんです。みんなが言っています。」
また次の疑問がわいてきました。「人手不足」とは「何と比較して」言っているのでしょうか?
さらに話を聞いていきてみましょう。
「お昼の時間は人手不足で現場はとても大変なんです。みんなが言っています。」
「お昼の時間」とは「何時~何時までの間」のことでしょうか?
みなさんは職場内で飛び交うこんなセリフを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、こうしたセリフは何の疑問も持たれずに多用されています。
もうお分かりのことかと思います。
このような曖昧な表現を使っているため、上司から
・数字を使って話しなさい
・具体的な数字を出してみなさい
・何を言っているのかわからない
といった指摘を受けてしまうのです。
※特に経営層は数字大好きなので注意しましょう。
報告の内容を詳しく聞いてみると
昼食後の13時から約30分の間、スタッフが1人休憩に入るのため現場の人数が少なくなり、そこに口腔ケアやトイレ介助、休息が必要な方の就寝介助が重なってしまうため、現状の体制では負担がある。実際に事故は発生していないが、事故が起こるのではないかといった不安からストレスがたまる。
と、パートスタッフの5人の内、最近入職したばかりの2人が言っていただけ。
ということだったりします。
もちろん、このパートスタッフ2名の言うことが全体の課題を的確に捉えているかもしれません。
しかし、人の意見とは少なからず感情という要素が含まれているため、良いも悪いも極端な意見が含まれています。
そこだけを拾ってしまうと「その通りだ」だったり「そうじゃない」というふり幅の大きい結論に至ってしまいます。
このふり幅の大きさこそが、現場が振り回される原因です。
上記の事例はよくある事だと思います。
スタッフが悪いのではなく、そのようなことになってしまう主たる原因は数字力の欠如に他なりません。
数字が使えることで様々なメリットがある一方で、数字が使えないことで様々なデメリットも存在します。事項で具体的に紹介していきます。
数字力が不足している場合のデメリット
数字力が不足していると、大きなデメリットが発生する可能性があります。
もしかしたら既にデメリットを受けてしまっているかもしれません。
そのデメリットは
「権力者」たちの意見のみが通ってしまう。
というデメリットです。
介護の現場には管理者をはじめとして、主任やフロアリーダーと呼ばれるベテランスタッフが存在しています。
なかにはお局様というちょっと厄介な存在もあるかもしれません。
この人たちの特徴は、発言力があるということです。
発言力があれば人を動かすことができます。その影響力は大小ありますが
詰まるところ、権力者といえます。
前項で紹介した「みんなが言っています。」という意見を数字無しで真に受けてしまうと、あたかも全員の意見として受領されてしまうわけです。
そしてそのまま、感性や感覚が大部分である個人の意見が全員の意見として進んではいけない方向へ進み始めます。
本来の姿であれば
・「みんな」とは全体の何%の意見なのか
・その何%にはボリュームゾーンと呼べる人材は含まれているのか
・確認した結果、みんなの意見だったとしたら具体的な問題点はなにか
・実行性のある対策を打つにはどうすればよいか・・・
といった具合で話が前に進みます。
数字で話すことができれば、このような問題を回避することができたはずです。
数字力がある場合のメリット
数字を用いて話をするなんて、一見して「管理者以上の経営層たちが話をすることだ」といったように「権力者たちがすること」のように思えるかもしれません。
たしかに、数字を操作することなど、いち現場スタッフには責任の重い話です。
しかし、数字を操作することと、数字で話ことは全くの別物です。
個人の感性や感覚といった乱暴な意見と戦えるのは、唯一「数字」だけです。
仕事は背中を見て覚えろ、スキルは見て盗むもの、自分の感覚を頼れ。
↑ちょっと何を言っているのかわかりませんよね。
これらの意見を採用する旧人類たちが営む介護施設が果たして魅力的な職場と言えるでしょうか。
特に若い人の意見はすり潰され、多くの人がフラストレーションを感じていることでしょう。
こうした組織はいつまでも変わることができません。
今までは変わることができない。で済んでいたのかもしれませんが、これからは淘汰される時代です。
数字にはその力があります。数字を駆使するということは、一部の権力者だけが実験を握っている、そうした状況を打破するための「弱者の武器」だと思います。
また、
数字で話すことができれば、周囲から「ちゃんと考えている人だな」という嬉しい評価をもらえることもあります。
つまり、自分の発言力が向上し、相手に動いてもらえる。
というメリットがあるのです。
なかなか話を聞いてくれなかったのに、聞いてくれるどころか動いてくれるなんて、こんなに嬉しいことはないですよね。
次章からは具体的に数字でどう伝えていくか、どう数字と向き合っていくのか、そのテクニックを見ていきましょう。
努力賞ではなく結果にこだわる
介護の世界では数字だけでなく、結果に行きつくまでの過程を大切にする傾向があります。
確かに過程も大切です。
しかし、過程をゴールにすることは間違いです。
このような会話では過程に満足してしまい、目的はあくまで結果であると言う認識を低下させてしまいます。
結果にこだわるからこそ、その間の過程もすばらしいものになります。
そして、ここでいう結果こそ「数字」であるということを強く認識する必要があります。
簡単な数字を入れて説得力を高める
数字は説得力を高め、相手から信用を得るためのツールとしても活躍します。
たとえば、上司から
「○○君、来月のイベントの計画はどこまで進んでいますか?」
と確認されました。
これは明らかに正確な情報を要求しています。
このような場面で
・「だいたいできています」
・「もう少しで報告できます」
・「もうちょっと待ってください」
なんて答えていないでしょうか。アウトです。
相手が正確な答えを要求しているときこそ、数字を使って話すことが大切です。
・「だいたいできています」ではなく「7割仕上がっています」
・「もう少しで報告できます」ではなく「明日の15時には報告できます」
・「もうちょっと待ってください」ではなく「1点業者に確認中で、本日17時までに回答をもらえるようになっています」
といった具合です。
数字は誰でも客観的に判断できるデータなので、誰もがイメージを共有することができます。
不確実な未来は、数字を当てはめて乗り越える
どんなに綿密に準備を重ねたところで、介護は人相手の仕事です。
つまり、職員の思い通りになるケースはほとんどありません。
介護の仕事は常に「不確実性」に満ちているのです。
しかし、冒頭で説明したような「みんなが」「とても」といった曖昧な表現で強行突破を試みると、現場を混乱させてしまいます。
偶然に振り回されない仕事環境を作り出すには、やはり数字が必要です。
ただし、やみくもに数字だけを発信していても、相手に伝わりません。
数ある伝え方の手法の中でも介護の現場に最もコミットするビジネススキルは
シナリオ・プランニングの能力だと思います。
世の中には、自分でコントロールできることと、できないことがあります。
しかし、どんなシナリオが起こり得るかを事前に予測しておき、その準備をしっかりしておけば、目の前の出来事に一喜一憂せず、淡々と次の仕事を処理することが可能になります。
これがシナリオ・プランニングの考え方です。
ちなみに、確実に起こりそうなこと(高い確率で起こる事)や、実際に起こるか分からないこと(低い確率で不確実な事)を区別していきます。
ではさっそく、数字を意識しながらシナリオ・プランニングでどう伝えていくのかを見ていきましょう。
シナリオ・プランニングで話せない人の特徴
この対策でたぶん事故は防止できるようになると思います。
シナリオ・プランニングで話せる人の特徴
この対策ので9割の事故を防止できるようになります。しかし、残り1割りの原因因子はご利用者側にあると考えられるため、再発時のリスクを考え、本人・家族への同意形成が必要となり・・・。
上記2つの例を参考に説明していきます。
まず、シナリオ・プランニングで話せない人の特徴は、見ての通り数字が入っていません。
「たぶん」だったり「○○と思います」といった曖昧な表現です。
また、事故は防止できるだろう。といった楽観論「だけ」を主張しています。
次に、シナリオ・プランニングで話せる人の特徴、見ての通り数字が入っています。
事故防止策にどの程度の効果があるかの見込み値を説明したうえで、事故が防止できないケースを予測しており、悲観論「も」説明しています。
つまり、単純に数字を当てはめるだけでなく、楽観論・悲観論という2つの軸(視点)から今後の未来について伝えることができています。
事前にシナリオを描いておけば、仕事の全体像が見えて、不安も解消されるのです。
自分事と考えてもらうには損得勘定で心に訴える
人は自分が得をすることより、損をすることに過剰に反応してしまいます。
これは「プロスペクト論理」と言われるものです。
たとえば
この事故対策を実行すれば、再発率は1%です。
この事故対策を実行すれば、99%再発しません。
もしあなたが報告を受ける立場だった場合、どちらの報告を受けたいと思うでしょうか。
おそらく、誰もが後者を選ぶと思います。
おわかりの通り、どちらも言っている事は同じで、別の表現をしているだけです。
しかし、与える印象は大きく違います。
他にも
「50%」よりも「2回に1回」といった表現の方が理解しやすかったり
会話の最後に「年間で事故件数が1/2に減るわけですね」と+αの有益情報を相手に伝えたりすることで、より伝わりやすくなります。
バカ正直では信頼を得られない
値段交渉をする際によく活用される手法に「アンカリング」というものがあります。
たとえば
本当は5万円くらいの価値にもかかわらず、最初は10万円と吹っ掛けておきながら、相手の「高すぎるから値引きして」というような反応をみて、最終的には7万円ほどで落ち着く。
というものです。
相手は最初は10万と言われているため、心理的なアンカー(碇)となってしまい、さすがに半額までは交渉できないという心理が働いたり、3万円も値切れた。といった満足感が生まれたりします。
これがアンカリング手法です。
これを介護の現場で活用すると次のようになります。
このように伝えておくことで、2日で提出されると「頑張ってくれたんだ」という満足感があり、3日なら「期限の通りだ」と約束を守ったことを評価し、少し遅れたとしても「最初にそう言っていたから仕方ないか」というような心理状態になります。
ここで何が言いたいのかというと
無理にサバ読みなどせずに、きちんとアンカリング手法を活用して「信頼」を勝ち取りましょう。ということです。
バカ真面目に「1週間ほどで提出できます。」と言ってしまうと。
・「ほど」ってなんだろう・・・。
・「1週間は幅があるな・・・。」
なんて思われても仕方がありません。
アンカリング手法は悪用する事が目的ではありません。
誠実な応答が一番の信頼を得ることは言うまでもありません。
今回の記事でお伝えしたいことは、あくまでも強い立場の人や発言力のある人達と対等かそれ以上になるために「数字」と「伝え方」の「スキル」を駆使して現状打破していくことにあります。
最後に
世界の共通言語は英語ですが、実は数字の方が全世界に普及していて、英語よりもはるかに共通認識がもてると言われています。
また、ビジネスシーンでは数字の無い会話はただの雑談だと言われてしまうことも。
数字と聞いただけで拒否反応が出てしまう人もいるかもしれませんが、今回ご紹介した内容はバリバリの文系でも使いこなせるように、文系よりに寄せてみました。
かくいう私もバリバリの文系だからです。
最初は慣れないかもしれませんが、数字で話すことを習慣化してしまえば、次第に数字感覚が磨かれ、自然と数字に強くなるはずです。
まずは慣れることです。
誰かのお役に立てれば幸いです。
それではまた!