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私たちは誰しも失敗したくないと考えています。
これは、失敗することは悪いことだ。という世間の常識があるからです。
・失敗したら、怒られる
・失敗したら、他人に迷惑をかけてしまう
・失敗したら、責任をとらされる
・失敗したら、評価を下げられてしまう
・失敗したら、周囲から責められる
こういった事態が頭をよぎってしまうため
・無難に進めていこう
・バレないように隠ぺいしよう
・何とか誤魔化してしまおう
・嘘をついてその場をしのごう
という行動をとってしまいがちです。
これは、自分を守るために失敗を避けようとする防衛本能です。
しかし「失敗に正面から向き合えない人」は成長の速度も減速するし、同じような失敗をくり返したり、新しいことや困難なことへの挑戦を避けたり、都合が悪そうなことから逃げ出すクセがついてしまいます。
このようにデメリットがあることを理解しておかなければいけません。
しばらくすると、また妥協をしてしまいます。
結果、自分自身で勝手に下へ下へ落ちて行くため、成長するどころか減退してしまいます。
誰しも失敗はしたくありません。
しかし、誰しも失敗を経験します。
成長して失敗することが減ったとしても、人は永遠と失敗を繰り返します。
失敗から逃げ出すことはできないのです。
つまり
失敗とどのようにお付き合いをしていくかが重要なのです。
「失敗は成功の基」と言われますが、この意味を本気で考えてみましょう。
今回のテーマは「失敗から何を学び、どのように成果につなげるか」です。
この記事で学べること
・失敗をポジティブにとらえる考え方
・原因の探し方
・失敗を成功に変える仕事術
失敗のネガティブイメージから改善していく
介護現場では、時々ミスやトラブルが発生してしまいます。
少ない人数で多数の要介護者や認知症の人を相手にしているためミスしやすい環境だと言えます。
失敗とは文字通り「失い、敗れる」と書くようにマイナスな印象は仕方がないのかもしれません。
しかし、失敗を改善し、成功することができれば様々なメリットを得ることができます。
失敗を改善するメリット
・確実に成果に近づく
・同じ問題をくり返さない
・周囲から信頼されるようになる
・仕事の効率や生産性が向上する
より良い職場環境を作っていくには、失敗へのマイナスな印象を放置しておくわけにはいきません。失敗を改善できたときのメリットを意識することが大切です。
そこで、以下のように少し考え方をずらしていきましょう。
「失敗」 → 「問題」 → 「課題」
どうでしょうか。失敗と表現するよりも課題と表現した方が幾分もポジティブなイメージになったかと思います。
失敗した真の原因を考える
何度も同じ失敗を繰り返してしまうのは、大きく分けて2つの理由があります。
1つ目は、引き起こす原因を取り除かずに放置しているから
2つ目は、真因をつぶすことができていないからです。
ビジネス用語ではボトルネック(瓶の首)と呼ばれることがあります。
ボトルネックとは、全体に影響を与えている問題要因のうち、最も問題視されている部分のことです。
介護の現場で事故が発生すると
「〇〇さんが確認していなかったから」
「注意力不足だったから」
「担当者の判断ミスだったから」
といった原因を指摘し、報告書が提出されることがあります。
その事故の対策欄には
「確認を徹底する」
「注意する」
「自己判断しないようにする」
といった内容の対策が書かれています。
ここで注意したいことは
正確な原因を探ることができずに事を進めてしまうと大失敗するリスクがあるということです。
先ほどの例でたとえると
「注意力不足だったから」といったことを原因としていますが、これは表面上のことであり、真因を見抜くことができていません。
理由は
なぜ注意力が不足していたのか?ということを深堀していく作業が放置されているからです。
「今後は気をつけます」「以後、注意します」で終わらせてはいけません。
真因をつぶして始めて問題は解決に向かいます。
次章で紹介する「なぜ?」をくり返して、原因を追究する方法を学んでいきましょう。
「なぜ?」を5回繰り返して真因を追求する
根本原因追求という言葉があります。
問題の真因を突き止めるために「なぜ?」を5回繰り返すというものです。
短絡的に真因を決めつけず、忍耐強く自問自答を繰り返しましょう。
くり返すことで脳が活性化し、自然と答えを探そうとするはずです。
とくに管理・指導な立場にある人は「誰の責任なのか」を考えるのではなく、真因をみつけて改善し、失敗を繰り返さない仕組み作りにエネルギーを使ってください。
根本原因追求の例
【課題】ある職員がご利用者を入浴介助した際、皮膚剥離事故の発生数が多い
なぜ?(その職員さんの時だけ多いの?)・・・1回目
車イスからシャワーチェアーへ移乗する時に、フットレストで足を擦っているから
なぜ?(フットレストで足を擦っているの?)・・・2回目
移乗のやり方が他の職員と違っているから
なぜ?(他の職員と違うやり方をしているの?)・・・3回目
それぞれが個々のやりやすい移乗をしているから
なぜ?(バラバラ?安全な移乗方法で統一できていないの?)・・・4回目
正しい移乗方法を知っている人、教えれる人がいないから
なぜ?(教えれる人がいないのか)・・・5回目
【真因】移乗に関する教育の機会が設けられていないから
ダメな例は、個人のせいにすること。
乱暴だから
言うこと聞かないから
そういう人だから
能力が低いから
言いたい事はわかります。
しかし、このように個人の問題として片づけてしまえば真因にたどり着くことはできません。
根本原因追求の2つの注意点
なぜなぜをくり返して真因に迫っていく方法ですが、使い方を間違えるとトラブルに発展する恐れがあります。
それは
相手への詰問になってはいけない。
というものです。
誰かと一緒に考えていくことは大丈夫ですが、誰かへ責任追及する姿勢は間違っています。
相手に「なぜ?」を問いかけるときは、あくまで事実を確認する。といったスタンスで「何が起こったの?」と言ってみましょう。
また、1つだけルールを付け加える必要があります。
それは
「人員不足」を原因としないことです。
もちろん、人員不足も大きな原因の1つであることは言うまでもありません。
しかし、介護の現場で人員不足を真因だと決めつけてしまうと、どんな事でも人員不足が原因だとつなげられてしまうため、その他の真因の可能性を探ることができなくなります。
たとえば
転倒事故が発生した。 → 人手不足が原因。
業務が回らない。 → 人手不足が原因。
ご利用者に良い介護が提供できていない。 → 人手不足が原因。
レクリエーションが充実しない。 → 人手不足が原因。
こうなってしまうと、まさに思考停止状態です。
一度この考え方に染まってしまうと、たとえ別の業界に就職してもこのルーティンから抜け出すことは困難になります。
責めるのは人ではなく仕組みの方
違法なことや悪意のある就業規則違反は別ですが、仕事でミスをした人を責める行為は何のメリットもありません。
もし、そのようなことが常態化している会社であれば、底が知れています。
その理由は、個人のスキル不足などの人的要因を原因にして対策を打ち出すことは誰でもできる簡単な逃げ道だからです。
よく見られるケースは
失敗の原因を「スキル不足だから失敗してしまう。もっと勉強してスキルを磨きなさい」と職員を叱り、その場を収めるケースです。
人間は誰でも失敗をします。
なので、ヒューマンエラーを前提とした失敗しない仕組み作りが必要なのです。
たとえば
介護スタッフの注意力不足で事故が発生してしまった場合でも、介護スタッフの注意力不足を引き起こした原因を考えてみます。
絶対に「以後気をつけます」で言わせて終わりにしないようにしましょう。
お金を投資しなければならないケースもありますが、多くの場合がお金をかけられない状況にあると思います。そんな時は「お金をかけられないなら、その代わりに何ができるかを考える」必要があるのです。
一番やってはいけないことは放置です。放置は絶対にダメです。
誰がやっても失敗しない仕組みを考える
問題は新人でもベテランでも、誰がやっても失敗しないようにする仕組みを考えることによって解決します。
その仕組み作りをするにあたって参考にしたいのは標準化です。
仕事のやり方が異なれば結果にバラツキが生じます。
仕事の標準をつくることで失敗を防ごうという考え方です。
つまり、誰がやっても同じことができる取扱説明書(マニュアル)を作るということになります。
たとえば、以下のような場合は抽象的すぎて、なにをどうすればよいのかハッキリしません
「観察強化」
具体的に何をどう観察していくのでしょうか。
「経過観察」
なにを、どのように、いつまで経過を見ていくのでしょうか。
「注意する」
どの程度で何に対してでしょうか。
「急いで」
午前中までですか、明日まででしょうか。
このように個人の感覚任せで仕事を進めて行くことは高いリスクがあります。
また、ここでいう標準化とは単なる決め事ではなく、皆が認識できるようにわかりやすく「見える化」されている必要があります。
標準化の例
申し送り漏れを予防するための申し送り項目を決めておく
必ず記入すべき項目や内容を決めて書類のフォーマットを統一する
業務日誌などの記入例をつくる
その他にも面白い標準化として排泄物のスケールを作った。という事例もありました。
排泄物の「小(少)・中・大(多)」といった量は人の見た目感覚で判断しています。
しかし、本当の意味で標準化したければ実物大があった方がいい。ということで、粘土を丸めて模型を作っている事業所もあるようです。
※標準化(マニュアル)は絶対ではありません。より良い方法があれば書き換えていくなど、常にアップデートをおこなってください。
最後に
失敗は成功の基。失敗は宝の山。失敗は学びの宝庫。失敗しないことが問題。など等、失敗は会社を良くするための重要な要素ととらえる考え方は浸透しています。
しかし、昔から聞き慣れ過ぎていて、正直ひびかない・・・。なんて人もいるんじゃないかと思いました。
今回の記事は、そんな理由から書こうと思い立ちました。
失敗に対するネガティブなイメージを払拭し、失敗を失敗で終わらせずに次に活かそうという意識で仕事をする人が増え、介護現場が活性化していくきっかけになればうれしいです。
それではまた!